わたしのかぞく

小学生の作文みたいなタイトル

わたしの家族はもうずっとばらばらです

おとうさんは私が今まで出会った人間の中でいちばんかっこよくて父親向きじゃない人で、おかあさんはいっちばん不器用で一生懸命で、弟は要領が良くて勉強ができてひねくれている

両親を恨んで、それ以上に尊敬して、弟のことはうらやみながらも誇りに思っている

 

ばらばらな家族は美談にしあげられるほどのものではない

外資系の会社に勤める父親と学習教材を作る母親

物心ついた時から毎年海外旅行に、冬はスキーに行った

小学生のときお父さんが起業した

四年生になった時ばかみたいに長い煙突とあほのように防犯会社のシールがついた家を建てた父は、全部お父さんとお母さんが考えたんだぞと笑った

だんだん父の朝帰りが増えて両親の寝室はいつも二日酔いのにおいがした

夜中に起きると母親は真っ暗な部屋でテレビを見ながら能面のような顔をしていた

外国のスーパーのにおいをさせて甘ったるいお菓子を買ってくる父親がすきで、辛気臭くて口を開けばきいきい文句しか言わない母親が嫌いになった

弟は当然ながら反抗しはじめた私が諸悪の根源だと不仲になったし、父はだんだん家に帰ってこなくなりついには別に家まで借りだして現在まで完全に別居を続けている

わたしは高校2年生で家に帰らなくなり卒業式の日、保険証と携帯を置いて家を捨てた

 

ことしか覚えてなかった、最近まで

おかあさんと5年ぶりにまともに会話していろんなことを思い出した

長い休みにいつもばかでかいオレンジ色のスーツケースで旅行に行った

人がいない流れるプールでお母さん鮫がきたぞーってみんなでおいかけっこした

そのあと誕生日のお祝いでフォンダンショコラを食べすぎて気持ち悪くなった

はじめてのメイク道具はグアムで買ってもらった

ばかみたいに濃いメイクをして弟にバカにされた

韓国で箸が重すぎて母とそろって筋肉痛になったけど、全部おいしかったからいい!って言い張ってお父さんは笑ってた

中学の卒業祝いでヨーロッパに行った

みんなでどこかに行ったのはそれが最後だったけど、買ってもらったばっかりの携帯に夢中でお母さんとけんかした

 

全部もったいなかったなあと思うしみんなばらばらだったけどわたしたちいい家族だったじゃん、とも思う

 

風邪をひいて寝込んでいた日、おきて下を覗くとみんながバックトゥーザフューチャーを見ていた

わたしも下に降りてぼんやりしながらしょうもないシーンで笑った

上のソファに弟とお父さんが座っていておかあさんは洗濯物をたたんでた

その日を思い出したときどうしようもないしあわせはあったんだなと思った

 

牛を使ったのだというふわふわのソファもばかみたいな煙突も、海外旅行もなくていいから、お父さんがおやすみを言える時間に帰ってきてお母さんが能面の顔をしない家にうまれたかった、それが幸せなのだと思っていたけど違った

水曜日に母親の選んだ無農薬無添加の食べ物が届く、牛柄のソファと長い煙突のあるあの家と、朝帰りをする父、必死に頑張りすぎた母とできすぎた弟がわたしのしあわせだった

はたから見たら別居を続ける両親も家を出てふらふらしているわたしも、父を見返すために国立のいい大学に行くと言っている弟も不幸で、だから、家族も失敗なのかもしれない

もうすぐわたしたち家族は戸籍上でもばらばらになる

世間からすると大失敗であるというのは重々承知の上だけれども、だけど、だけどさあしあわせだったよって言いたい

わたしたちを失敗だと思っている人よりもお父さんとお母さんに

たぶんこれからバックトゥーザフューチャーを見るたびにあの日を思い出す

そのたびにわたしたち家族はしあわせだったなと思えるだけでいいんじゃないかと思う

弟は私を恨んだままで、父と母にもう愛とかそういうのはなくて、だけどたぶんみんなそれぞれにしあわせだった日を持ってる

だから安野家は失敗なんかじゃない

以上、ばらばらになるけど大成功だったわたしのかぞくのはなしでした